自然薯・黒にんにく 井上秀雄さん


奥美濃最高峰・能郷白山を北に望み、足元には根尾川が流れる山あいの畑。自然豊かなこの場所で自然薯を栽培しているのが、井上秀雄さんだ。

 

ようやく寒さが和らいできた3月中旬、井上さん夫妻が種イモの植え付けに向けた準備を進めていた。

 畝の真ん中に深めの溝を走らせ、そのなかに、専用の細長いポリ袋とカットした波板を埋め込んでいく。4月に種イモを植え付けると、自然薯はおよそ半年をかけ、ポリ袋のなかで8090センチほどにまで細長く育っていく。

 

 こだわりの一つが土づくりだ。山で落ち葉を拾い、有機物として畑にほどこす。自家製のもみ殻燻炭をまくことで虫が付かず、無農薬で育てられるのだという。 

 ここでとれる自然薯は、寒暖差と清水で風味がよく、粘りも強いのが特徴。秋から冬にかけて収穫したものは、大手商業施設などでお歳暮の品として取り扱われている。

根尾生まれ、根尾育ちの井上さん。その生粋さを「少年野球の遠征と自動車学校の教習以外、根尾を出たことがない」と表現して笑う。

 

中学を卒業後、父がやっていた畳店で働き始めた。だが、畳のある家が減るに伴って、農業が本業へと取って代わっていった。

自然薯だけでなく、自宅周辺の畑ではにんにくも栽培する。これを収穫して乾かしたあと、炊飯器でスチーム保温すること25日~1カ月。こうしてできる黒にんにくは、地域でも好評の品だ。

 

自ら育てる自然薯と黒にんにくが、元気のみなもとなのだという。

 「仕事が好きや。ぜんぜん苦にならん」。78歳になったいまも、農作業への熱意は変わらない。そして、長年培ってきた農業の経験を、次の世代に伝えたいと思っている。

 

「本当に後継者がほしい。いいものができるから、僕が教えられることは何でも教えてやりたい」

 

20223月取材/年齢は取材当時)